今回は数ある毒物の中でも優先的に体から排除すべきものについて取り上げます。デトックスでまず大事なのは、「何を」デトックスするべきかを知ることです。私たちは日常的に様々な毒物に晒されており、デトックスは栄養療法において欠かせないプロセスといえるでしょう。
デトックス環境を整える
本題に入る前に、デトックス環境についてお話ししましょう。デトックスするには環境の整備が必要です。なぜなら、デトックスを阻む因子が多数あるからです。

例えば、自律神経が緊張していたり、低血糖症状があったりするとデトックスはうまくいきません。また、有機水銀の80%は便から排泄されるため、便秘の人は水銀を溜め込んでしまいます。
体のどこかに炎症があると、胆汁分泌やミトコンドリア機能、抗酸化力が低下し、結果的にデトックス効率が大幅に低下します。さらに、解毒には多量のATPを消費するため、ミトコンドリア機能が低下していてもうまくいかないでしょう。
したがってデトックスする際は、どのサプリメントを飲むかを決めるよりも先に、食事改善やライフスタイルの見直しを行う必要があるのです。
「何を」デトックスすべきなのか
ここからが本題です。優先的にデトックスすべきもの、それは「水銀」「ヒ素」「カビ毒」です。これらは脳やミトコンドリア機能に障害を起こすため、積極的に介入すべきでしょう。
脳の6割以上は脂質でできています。脂溶性の水銀やヒ素、カビ毒は、血液脳関門を容易に通過し、脳に入り込んで安定化してしまいます。
身近な毒物に、アマルガムがあります。水銀を主原料とするアマルガムは、1970年代から歯の詰め物として広く使われてきました。
アンドリュー・カトラー著『Amalgam Illness』によると、アマルガムが自閉症や発達障害、慢性疲労、繊維筋痛症、化学物質過敏症などを引き起こすとされています。また、デール・プレデセン著『アルツハイマー病 真実と終焉』には、水銀とカビ毒がアルツハイマーの一因となっていることが記されています。

水銀やカビ毒が脳をはじめ体内の様々な器官に深刻な影響を与えることは、もはや疑う余地がありません。
水銀とヒ素はミトコンドリア障害を引き起こす
水銀中毒の症状で圧倒的に多いのは、説明のつかない疲労感です。これはすなわち、ミトコンドリア障害を示します。

水銀やヒ素はTCAサイクルを阻害し、ミトコンドリア機能を低下させてしまいます。脳にミトコンドリアが多く存在することから、ミトコンドリア障害で最も影響を受けるのは脳です。したがって、ミトコンドリア障害=脳機能低下とも言えるでしょう。
さらに、水銀は電子伝達系を阻害することもわかっています。硫黄と親和性の高い水銀は、呼吸鎖複合体ⅠのS-S結合に入り込んでタンパク質構造を変化させ、その結果ATPの産生が阻害されてしまうのです。

余談ですが、この性質を逆手にとって、硫黄をたくさん含む食事またはサプリメントを摂ることにより、水銀をトラップして解毒する手法もあります。
有機酸検査をされた方は、クエン酸(29番)とアコニット酸(28番)の数値を見てみましょう。クエン酸に比べてアコニチン酸が低くなっている場合は、アコニターゼの作用が水銀で阻害されている可能性があります。

水銀はヘム合成を阻害する
水銀の弊害はまだまだあります。ヘム合成過程で経由するポルフィリン経路において、水銀やカドミウム、鉛などが作用し、ヘム合成を阻害します。結果、貧血を引き起こし、息切れなどの症状が起こります。

ヘモグロビンは酸素を結合させて全身へ運ぶ役割を担いますが、酸素よりも水銀との親和性が強いため、一度くっつくとなかなか離れません。そのため、水銀と結合したヘモグロビンは、120日間の寿命を終えるまで、本来の機能を失ってしまうのです。
血液検査の数値はどうなるでしょうか?体内の酸素飽和度が低下し、造血方向に傾きます。したがって、高ヘモグロビン値を示すのが、水銀中毒の特徴でもあります。アマルガム除去で酸素飽和度が上昇したというデータも報告されています。
まとめ
今回は「何を」デトックスすべきかにフォーカスしました。
- まずはデトックス環境を整える
- 脳に蓄積し障害を引き起こす→「水銀」「ヒ素」「カビ毒」
- ミトコンドリアを障害する→「水銀」「ヒ素」
デトックスのHow toを学ぶ前に、これらのポイントを抑えておきましょう。